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泥
2018年3月18日発行
泥という物話
愛や幸せというものの意味や価値、そして表現の仕方や重みはそれぞれに違うというのを考えて書いたお話でした。
書いている間にバイバイ、ブラックバードのドラマを見ました。
城田優のでかくてごつい女装がすごいです、必見です。書いているとき、特に本の後半を決めているときに影響されたなあと思います。原作は終わってから読んだのですが、ドラマをみている時、最後のシーンの部分がどういう文章になってるか二日ほど想像してはこうだろう、ああだろう、と楽しんでいました。そして本屋で手にいれて読んだとき、ああ、本って本当に美しいなあとしんみり思いました。そんな本が書きたいと、と思って書いた作品です。私の中の結末はあります。でも、門倉さんの考えた結末とも、宇佐美の結末とも、あなたの結末とも違う。
PRIMERY
さよなら渓谷/光媒の花/他人の関係/真実の羽/おとなの掟
バイバイ、ブラックバード/ラテラリティ/
さよならの向う側/異邦人/オリビアを聞きながら/
イミテイション・ゴールド/二時間だけのバカンス/
式場とホテルと
部屋
最初に書いたのはpixivに掲載しました「本日はお日柄もよく」、短編集という気分で書き、話の順番は時系列にするつもりでしたが、出だしの部分で門倉がマイクテストをするところが好きだったのでこれを頭に持ってきました。
本のタイトルも「本日はお日柄もよく」にするつもりでしたが、話をまとめるに当たって同タイトルの本があることを知ったので他のタイトルを模索しました。
そこで思いついたのが泥、「祝」という漢字のように一文字で、かつ宇佐美と門倉の関係を私の中で一言で表した文字です。門倉は宇佐美と出会うまで真面目に刑務所で刑務官(看守)として働いてきました。草原を歩いていたら突然に穴にはまります。それは穴ではなく泥の海、片足を取られたら最後、もう抜けて前の大地を踏みしめることはありません。この泥の海に底はあるのでしょうか、それともずっとずっと深く、ブラジルまで続いているのでしょうか。失ってしまった平穏な人生は振り返ることはできても手には入らない。どんどんと息苦しくなってしまいには飲み込まれれるでしょう。
泥に飲み込まれたのが明くる朝です。
「終わりなんて簡単にやってくるのだ」
この本の中で好きな部分の一つです。指輪が増えて誓いが立ったことは二人の間に流れる時間には何も影響しない、そう思っている宇佐美と言葉や身なり、宇佐美自身がが意識しないところの変化に目を瞑れ無くなってしまった門倉。大きな転換点はこの本のテーマでもあるご祝儀袋でした。遺書を書くような気分で名前を書いて金を詰めたご祝儀袋は、門倉にとって一つの宇佐美との別れでした。しかし宇佐美は、それを使って門倉をつなぎとめた。門倉の決意は踏みにじられたわけです。いくら女のように組み敷かれたとしても、男としての意地もある。失踪はちょっと脅してやろう、というものではなくかなりの決意でした。きっと二人の記憶と匂いの残るアパートを出るとき、静かに泣いただと思います。
北海道と台湾と
北陸
ごぼる、は北陸の方言で雪や泥に足がはまることです。台湾という何とも人間臭いチョイスに納得したということが宇佐美の変化を語ります。パイナップルケーキ、好きです。奥さんの尻に敷かれているわけではなく、そんなに興味がないのだと思います。結婚はしましたが、それも宇佐美にとっては門倉との生活を楽しくさせる彩りのひとつだったかもしれません。しかし門倉にとって結婚という誓いは重いものでした。そのあとも重なる体に、どんどんと嫌悪感を募らせると同時に失うことへの恐怖感で終わりを告げることはできません。いつか捨てられる日を夢見ていたのでしょうか。しかし本作の中では自分で決めて全てを捨てることを選びました。私は、宇佐美と門倉はもう出会えないと思っています。すごく近くまで行くことはあるかもしれませんが、もう二人の線は交わることはないでしょう。いつだってもっと早く手を伸ばしていたら届いたかもしれないのです。
しかししなかった、だからこういう関係になった。振り返ればいつだって後悔があるけれどももうそれはいたしかたのないこと。人生にもう一度はありません。この先の人生を二人がそれぞれどう生きるのか、忘れるのか、はたまた終わらせるのか。それは皆様のご想像にお任せします。是非こっそり教えてください。
そのほか
の話
暇乞いのはなし
門倉さんにあったかもしれない可能性、なので同人誌の同人誌のようなものです。読み返してみると矛盾がすごい!まあでも別のお話だと思って楽しむように作ったものなのでいいことに…してください…特急サンダーバードが北陸新幹線に切り替わりました。本当に早くなりました。特急の頃はよく強風で止まり、トンネルの中で何時間も過ごした記憶があります。
何もない町、異様にフレンドリーな老人、そして海、蜃気楼。立山連峰に降った雪が溶けて灰色の日本海に注ぎます。機会があったら是非行ってみてください。私はまだ見たことがありません。来年の初夏は宇佐美と門倉が寂しい水族館を見て、海岸線を歩き海の上に浮かぶ町を指差しているかもしれません。
おいでませ富山
装丁のはなし
本文はキンマリをよく使用するのですが今回は真っ白にしたく、上質紙を選択しました。
表紙のカッティング、水引は手作業のため個体差があります。イベント前数日はずっとキンコーズにいました。泥って大礼紙に印刷してもらう女……(持ち込みの紙はお願いしないと印刷できない)
表紙 ペルーラスノー
本文 上質紙
水引 紅白五本
紙 大礼紙 金銀振
スタンピングリーフ(ゴールド)
暇乞い クラシコトレス 星くずし
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